【寄稿】新潮2021年7月号

エッセイ「小さな部屋で言葉を脱ぐ」が新潮2021年7月号に掲載されています。

『犬もどき読書日記』のまえがきで少し触れたテレビレポーターだった頃のインタビューのことや、仕事中の読書体験について、すこし踏み込んで書いています。

身体中にぷかぷか浮かんだ疑問や違和感は本で出会った言葉によって整理され、やっと自分の手で触れられるようになる。私が言葉にしたかったことは、大抵の場合すでに誰かが本に書いているのだ。
「あなたの曇った眼鏡が世界を曇らせる、全部一緒にしてしまう。磨いてください、その眼鏡。できないんだったら、私をあなたの「物語」に登場させないで。放っておいてください」 
松田青子の短編集『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』に収録された一編「物語」では、様々な人に押し付けられる差別的な視線と一方的な「物語」を、現実を生きる人間が力強く押し退ける様子が描かれている。
私はこれを読み、胸の内側に火をくべられたように熱くなった。私は、あの時ずっとどこかでそう思いながらも言葉にできないまま、曇った眼鏡をかけ、それを人にも売っていた。

松田青子さんの新刊『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』にも触れました。日記と本の紹介という形式は『犬もどき読書日記』のような感じなので、本が気に入った方や、本を買おうかどうか迷っている方はぜひこちらの寄稿も読んでみてください。


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石山蓮華 電線愛好家・文筆家・俳優 お仕事のご相談はdensenraisan@gmail.comまでお気軽にご連絡ください。 頂いた内容は、Jungle.inc 担当者と共有させていただく場合がございます。